持続可能な都市を目指すイクレイ海外の会員自治体の取り組み
ドイツ・フライブルク
フライブルク市はドイツ南西部、フランス・スイス国境に近くのバーデン=ヴュルテンベルク州の都市で、人口は約23.02万人(2019年)、2030年までに温室効果ガスの排出を60%削減、2050年までにカーボン・ニュートラルを達成する目標を掲げています。
第二次大戦によって旧市街の約80%を失ったフライブルク市は戦後復興の際に、古い町並みを再現し、旧市街地での車両使用を禁止、公共交通機関を中心に自転車、徒歩を利用する政策を取りました。
1970年代頃からは持続可能な都市開発や市民生活のための目標を推進するための制度的枠組を確立させ、1990 年代からは、エコハウジングなどエネルギー効率が高い建物やカーボンフリーモビリティなど環境に配慮した公共交通を推進しています。
1993年、International Making Cities Livableは、フライブルグ市にCity of Vision Awardを授与しました。以降、フライブルク市は、持続可能な交通計画、歩行や自転車の促進、交通規制の仕組み、再生可能エネルギー、自然環境保全、持続可能性におけるリーダーシップが評価され、数々の賞を受賞しています。
フライブルクの生活水準は、ドイツ国内で最も高い都市の一つとして知られています。これは、気候と景観、意思決定と持続可能な都市生活の実現に市民が積極的に関与しているからです。
ガバナンス
科学、市民、ビジネス、政治の代表者40名で構成されるフライブルク持続可能性委員会が、市議会と市政に対し、助言を行っています。
気候変動にかかる行動の主要分野は、
- 気候変動に配慮した建築と都市計画(市は、連邦や州の規制よりも厳しい建築基準を導入)
- カーボンフリーモビリティ
- 再生可能エネルギー(フライブルク市は、地域や国レベルでの法律が不明確なため、独自に太陽光発電キャンペーンを開始)
- 持続可能な熱供給
- 商業・工業(フライブルク北部の最大の工業地帯では、個別に気候保護コンセプトを策定)
- 気候にやさしいライフスタイル
フライブルク気候保護基金
ドイツでは、公共事業のコンセッション料は、民間のエネルギー会社や水道会社から議会に支払われます。フライブルク市には、年間約1,200万ユー ロが支払われています。市議会は2008年に、コンセッションの10%を気候保護プロジェクトに使用することを決定しました。2014年には25%に拡大、2020年には50%に拡大しました。
融資対象となるプロジェクトは、エネルギー効率の高い建物、エネルギー供給、モビリティ、インフラ、産業、啓発などです。気候保護基金以外にも、議会は2008年以降、さらに1,900万ユーロを持続可能な都市開発のためのプロジェクトに費やしています。
都市計画
フライブルク市の都市計画局は、上述の活動に重要な役割を果たしています。例えば、1949年に市の中心部に歩行者天国を導入したり、市外にショッピングモールを建設することを反対するなど、常に先進的な取り組みを行ってきました。
かつてナチの兵舎があった人口5,500人のヴォーバン地区は、ヨーロッパで最大の太陽光発電地区のひとつに再開発されました。ヴォーバン地区の重要な計画の特徴は、
- エネルギー:熱源供給システム(CHP)、地域暖房、太陽熱と太陽光発電の両方を活用した「プラスエネルギー」地区
- 土壌の透水性を考慮し、環境に配慮した水管理を優先
- 自動車の使用を最小限に抑えるため、ライトレール、自転車、徒歩など環境に配慮した公共交通手段を重視
- 住宅計画に市民が直接参加し、グリーンテクノロジーを積極的に実証するための住宅所有者のイニシアティブを含む
ヴォーバン地区の強み:資金動員
ヴォーバン地区は、フライブルク市の予算を一切使わずに整備された土地を協同組合や市民、建設業者に販売して得た収入で、土地やインフラ整備の費用を調達しました。
ヴォーバン地区の弱み:住宅供給
ヴォーバン地区では手頃な価格の住宅が不足しています。フライブルク市では、手頃な価格の住宅の多くを遠方の自治体に頼っているため、通勤時間が長くなり、そのため二酸化炭素排出量が増加しています。
ヴォーバン地区は、高所得でアカデミックな中産階級が主に居住し、2014年から2018年の間に、30歳から40歳代の若い世代の多くが「より安い」住宅を求め家族連れで市外に転出しました。
カーフリーエリアの促進
カーフリーエリアの住民は、毎年、車を所有しているかどうか申告し、車を所有している人は、市営の立体駐車場の1つを購入しなければなりません。料金は1台分につき1万7,500ユーロ(約1万2,500円)、プラス月額管理費がかかります。
フライブルク市からは、持続可能な開発を確保する7つの原則を学ぶことができます。
- 既存の自然環境、景観を生かした建築デザインと都市デザイン。建物は、太陽光発電及び太陽熱を利用できるように設計
- 公共交通機関の利用促進を最優先
- 各地区に、商店、学校、幼稚園、医療・高齢者サービス、仕事場、レストラン、教会、スポーツ施設など、必要不可欠なインフラを完備
- 地域の特徴と強いアイデンティティを生かす
- バランスのとれた社会構造
- ヒューマン・スケール
- 建築デザインと都市デザインにコミュニティが参加
カーボンニュートラルを実現することで、市民の高い生活の質も確保するフライブルク市の取り組みは、社会問題と環境問題を同時に解決するゼロカーボンシティの可能性を示しています。