震災30年事業「神戸市グローバルカンファレンス」に参加して

4月28日、神戸市は、阪神・淡路大震災から30年を機に、レジリエンスをテーマとした国際会議「神戸市グローバルカンファレンス」を開催しました。カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国、ポルトガル、日本の8か国の市長らを招き、神戸市から震災の教訓や復興過程を共有するとともに、地震や洪水といった災害危機への備えや対応について議論を交わしました。日本からは、イクレイ日本加盟メンバーであるさいたま市の清水勇人市長が参加しました。また、本会議においてイクレイ日本の竹本和彦理事長が来賓あいさつを行ったほか、内田東吾事務局長がモデレーターを務めました。
30年前の朝に起きた大地震について、神戸市の久元喜造市長は、基調講演で次のように語りました。
「18歳で上京するまで、神戸で地震の揺れを感じたことは記憶の限り一回程度。東京では、震度3や4の地震を頻繁に経験していたが、神戸で大地震が起こるとは思っていなかった。つまり、30年前、多くの神戸市民は、神戸で大きな地震に遭うとは全く想像していなかった。」
現在、地球のあらゆる場所で、地震に限らず、気候変動に起因すると思われる洪水や熱波、山火事などによる甚大な被害が発生しています。それらの多くは、30年前の神戸と同じく、想定外もしくは想定以上の出来事です。参加した市長らは、隣国で起こった自然災害にも触れ、気候変動の影響が自らの地域にも及んでいること、いつどこで何が起こってもおかしくないと口をそろえました。
2009年にマグニチュード6.3の地震に見舞われたイタリアのラクイラ市の市長は、地震後の市民を巻き込んだ復興プロセス等について語り、各都市によって地理的条件も事情も異なるが、災害からの復興は、市民を巻き込んだ計画が重要であると強調しました。神戸市においても復興に当たっては、まさに市民による自助・共助が欠かせなかったことは言うまでもありません。
各参加市長は、会議前日に、「人と防災未来センター」を視察し、甚大な被害状況を学び、住民同士が助け合った記録に触れました。そして、「震災と未来のこうべ博」を訪れ、災害時に利用可能なテクノロジーや、子供たちがゲームを通して防災・減災を学ぶ姿を視察し、産学官の連携や市民とりわけ子供たちへの防災教育に触れました。
ポルトガル・ブラガの市長は、「直面している気候変動の影響による甚大な自然災害に、国家政府だけの対策では、レジリエントな回復力ある未来は期待できない。自治体、市民、地元企業等が共に立ち向かわなければいけない。」と述べました。グラスゴー市は、公平な移行のために全ての市民の参画がサステナブルな都市の構築には不可欠だと説明しました。出席した市長全員が、住民に近い都市こそが地域の特性に合わせ、市民とともにサステナブルな都市をつくり上げるのだと強調していたのが印象的でした。
会議のおわりには、「神戸市グローバルカンファレンス宣言」がまとめられ、今後も都市間の知見共有や交流を進め、グローバルレベルでの防災・減災の実現を目指し、安全で持続可能な社会の構築に貢献することを宣言しました。本会議が、住民一人ひとりが防災・減災を考えるきっかけとなること、そして都市同士が知見を共有し、共に持続可能な社会を目指すきっかけになることを期待するとともに、イクレイ日本もその一助となるよう活動を続けていきます。
出席者(市長級)
- 日本:神戸市 久元 喜造 市長
- 日本:さいたま市 清水 勇人市長
- カナダ:キッチナー市 Berry Vrbanovic市長
- フランス:ストラスブール都市共同体(Eurometropolis)Pia Imbs会長
- ドイツ:ハイデルベルグ市 Eckart Würzner市長
- イタリア:ラクイラ市 Pierluigi Biondi市長
- 英国:グラスゴー議会 Susan Aitkenリーダー
- 米国:コロンビア市 Barbara Buffaloe市長
- 欧州連合(EU):ブラガ市(ポルトガル)Ricardo Rio市長