プラスチック条約交渉 合意至らず(INC-5.2)

2025年8月、スイス・ジュネーブで、「プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会(INC)」の第5回再開会合(INC-5.2)が開催されました。イクレイが会期前にINCのプロセスに関わる人々と接触した限りでは、大多数がジュネーブで合意に至るだろうと希望を抱いていました。しかし、残念ながら合意には至らず再開会合は閉会しました。
なぜ合意できなかったのか?
国連環境計画(UNEP)によると、INC-5.2には、183か国から1400名を超える政府代表のほか、400以上の団体を代表する約1000名のオブザーバーなど2600名以上が参加しました。
かねてから、プラスチックの生産から廃棄までの「ライフサイクル全体」を支持する国と「廃棄物管理」に焦点を当てる国の意見の隔たりを埋めることが合意へのカギだと言われていましたが、今回の会合でその溝を埋めることができませんでした。
最も解決が難しかった課題は、プラスチック生産、懸念化学物質、資金メカニズムや実施手段の設計といった分野に関する「対象範囲」と「野心(取組の水準)」であると言われています。これらの課題は、根本的な問題であり、合意の難しさを物語っています。
今後の方向性について
国際的なプラスチック条約の有無にかかわらず、プラスチック汚染解決への行動は加速されるべきです。
地方自治体は、現場の第一線でこの問題に向き合っており、解決のための主要な担い手です。今回のINC-5.2の交渉の基礎となった草案(議長文書)で言及されていた地方自治体の役割を認識する文言が、最終日となった8月15日の草案(改訂議長文書)においては、残念ながら縮小されていました。イクレイは、「プラスチック汚染の根絶を目指す地方自治体連合」の一員として、プラスチック問題解決に向け、全ての加盟国とパートナーに対し、地方自治体との協力を働きかけます。また、今後の交渉の形態は不明ではありますが、できるだけ早期に再招集されるよう、すべての加盟国に強く求めていきます。
INCプロセスは、2022年3月に開催された第5回国連環境総会再開セッション(UNEA-5.2)で、「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)」を策定するための歴史的な決議が採択されたことにより始まりました。本決議により、プラスチック条約を策定するための政府間交渉委員会(INC)を招集することが国連環境計画(UNEP)に義務づけられたのです。
2025年12月には、第7回国連環境総会(UNEA7)が開催される予定です。歴史的な決議が採択されたこの国連環境総会において、再び、プラスチック条約の成立に向けたプロセスを活性・進展させる動きがあることを期待します。
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