プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会 (INC)

2025年9月17日更新
プラスチック汚染は、最も差し迫った環境問題の一つです。世界のプラスチック生産量は、2000年の年間2億3400万トンから2019年には、年間 4 億 6,000 万トンに倍増しました。プラスチック廃棄物も同時期に1億5600万トンから3億5300万トンに倍増していますが、リサイクルされているのはわずか 9% です。プラスチック廃棄物の多くが焼却または埋立地に送られており、約22%は、管理されていない埋立地に廃棄されたり、野焼きされたりと環境中に流出しています※1。
プラスチックは耐久性があるため、不適切に廃棄されたプラスチックは、何世代にもわたって環境に残り、小さな粒子に砕け散ること等により直径5ミリ以下の微細なプラスチック片(マイクロプラスチック)となり、生態系や食物連鎖に影響を与え、最終的には私たち人間の身体に入り、未知の健康被害をもたらす可能性があります。プラスチック汚染が及ぼす影響は、生物多様性や人間の健康といった問題だけではありません。プラスチックは、その生産から廃棄に至るまでのライフサイクルを通じて世界の温室効果ガス排出の大きな要因です。2019年には、プラスチックは18億トンの温室効果ガスを排出したと言われており、その9割が化石燃料からの転換と生産によるものです※2。
こうしたプラスチックに関する問題に対処するため、2022年3月の第5回国連環境総会再開セッションにおいて、「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力のある国際約束に向けて」が採択され、INC(Intergovernmental Negotiating Committee:プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会)の設置が決定されました。INCは、2022年11月から2024年末までの期間に5回の会合を経て国際文書(条約)の策定に関連する作業を完了することを目指しましたが、残念ながら2025年8月のINC-5.2会合においても合意に至らず、現在のところ、プラスチック条約の成立に向けた道筋は見えていません。
これまでの会合:
- INC-1:2022年11月 ウルグアイ(プンタ・デル・エステ)
- INC-2:2023年5月 フランス(パリ)
- INC-3:2023年11月 ケニア(ナイロビ)
- INC-4:2024年4月 カナダ(オタワ)
- INC-5:2024年11月 韓国(釜山)
- INC-5.2:2025年8月 スイス(ジュネーブ)
これまでの会合における地方自治体からのメッセージは明確かつシンプルでした。いくつかの重要なポイントは以下の通りです:
- プラスチック汚染のない未来を実現するためには、地方自治体の役割が重要であること。
- 廃棄物管理は地方自治体の中核的な業務であることがしっかり認識されること。
- 対策を迅速に拡大できるよう、財政的・技術的能力を含む資源を地方自治体が利用できるようにすること。
地方自治体は、単なるプラスチックごみ処理の運用主体ではなく、適切な資金調達へのアクセスを確保する上で不可欠なパートナーとして認識される必要があります。資金調達の仕組は、地方自治体の視点を考慮して設計されるべきであり、それによって施策の拡大や長期的な持続可能性を支援できるようにすることが求められます。
※1 Key findings, Global Plastics Outlook OECD 2022, 22 February 2022
※2 GHG emissions from plastics lifecycle, Global Plastics Outlook OECD 2022
関連サイト
イクレイ日本会員のプラスチックごみ削減に向けた取組
- 岡山市:プラスチックごみ
- 東京都:プラスチックの持続可能な利用について
- 名古屋市:プラスチックごみの削減
- 浜松市:海洋プラスチックごみ問題
- 神戸市:「神戸プラスチックネクスト~みんなでつなげよう。つめかえパック リサイクル~」
- 愛知県:あいちサーキュラーエコノミー推進プラン | サーキュラーエコノミー
- 板橋区:ごみ・リサイクル
- 葛飾区:ごみ減量・3Rの取り組み
- 川崎市:かわさきプラスチック循環プロジェクト(愛称:かわプラ)
- 北九州市:プラスチック削減の取り組み
- 京都市:京都こごみネット – 京都市ごみ減量・分別リサイクル
- さいたま市:プラスチックは賢く使ってごみを減らそう!
- 札幌市:海洋プラスチックごみ問題への取り組み
- 下川町:「マイボトルエコアクション」の取り組みについて
- 墨田区:プラスチックの資源回収・リサイクルがはじまりました
- 所沢市:海洋プラスチック問題の解決に向けて
- 豊田市:ごみ減量・3R(スリーアール)への取組
- 鳥取県:「とっとりプラごみゼロ」
- 富山市:プラスチック製品のリサイクル
- 長野県:信州プラスチックスマート運動
- 広島市:プラスチック資源循環法 – ecoひろしま~環境情報サイト~
- 松山市:海洋プラスチック問題とビーチクリーン活動
- 横浜市:よこはまプラスチック資源循環アクションプログラム
- 武蔵野市:PETボトルとプラスチック製容器包装の品質調査
- 佐渡市:レジ袋ゼロ運動
- 飯田市:飯田市エシカル消費啓発動画プラスチックスマート編